ETFの経費率について再考する
ETFや投資信託は一つの投資でたくさんの銘柄に分散投資出来るので非常に便利です。ただ、最近いろんなテーマ型ETFが出てきている中、経費率が結構高いものもチラホラ見かけます。
今日は経費率の影響がどの程度あるのか、改めて数値で見ていきたいと思います。
ETF、投資信託のメリット、デメリット
<メリット>
■分散投資ができる
■個別株投資よりはリスクが少ない
<デメリット>
■経費がかかる
■パフォーマンスが良い銘柄の恩恵が薄い※定期的にリバランスするため
ETFは一つの銘柄で複数の銘柄に分散投資することが出来るため、個別株投資よりはリスクを抑えることができますが、その代わりに運用会社に対する経費を払う必要があるのと、定期的にリバランスするので、際立ったパフォーマンスの銘柄も上昇トレンド中に自動的に売られたりするというデメリットがあります。これらを理解した上で投資する必要がありますが、今回は経費について着目していきます。
最近のテーマETF
最近はロボットやAI、半導体関係等でいろんなテーマETFが出てきています。そのようなETFは結構経費率が高く0.5%以上のものも多いです。以下のようなETFがあります。
コード | 銘柄名 | 取引所 | 経費率 |
---|---|---|---|
AIQ | グローバル・X・AI&ビッグデータ ・ETF | NASDAQ | 0.68% |
AI(人工知能)技術の発展の恩恵を受ける企業やビッグデータの利用・開発等に関わる企業に投資するETF。Indxx・AI&ビッグデータ・インデックスに連動する投資成果を目指す。 | |||
BUG | グローバル・X・サイバーセキュリティ・ETF | NASDAQ | 0.50% |
システム、ネットワーク、アプリケーション、コンピューター、モバイル端末などへの侵入や攻撃を防ぐセキュリティを開発・運営している企業など、サイバーセキュリティ技術の普及の恩恵を受ける企業に投資するETF。Indxx・サイバーセキュリティ・インデックスに連動する投資成果を目指す。 | |||
EBIZ | グローバル・X・eコマース・ETF | NASDAQ | 0.50% |
eコマース分野で活躍している企業、もしくは今後活躍が予想される企業に投資するETF。ソラクティブ・eコマース・インデックスに連動する投資成果を目指す。 | |||
SOCL | グローバル・X・ソーシャルメディア・ETF | NASDAQ | 0.65% |
ソーシャルネットワーキングやファイル共有、その他ウェブベースのメディア・アプリケーション等を提供している企業など、ソーシャルメディア産業に関わる企業に投資するETF。ソラクティブ・ソーシャルメディア・トータルリターン・インデックスに連動する投資成果を目指す。 |
今後の伸びを期待できるテーマだとは思いますが、一旦腰を据えて経費率について見ていきたいと思います。
経費率から実コストを求める
経費率について実コストがどれほどか確認します。
購入手数料を無視し、毎年100万円ずつ投資していき、年利5%で運用できた場合の資産推移のグラフを作りました。
ETFの経費率を0%、0.1%、0.5%、1.0%、2.0%と設定して資産の推移を比較しますと以下のようになります。
超長期ですが50年運用続けた場合、
経費0% :21,982万円
経費0.1%:21,231万円
経費0.5%:18,502万円
経費1.0%:15,826万円
経費2.0%:11,269万円
という運用結果となります。
つまり実コストは
経費0.1%:751万円
経費0.5%:3,480万円
経費1.0%:6,156万円
経費2.0%:10,713万円
と算出されます。
50年はちょっと長すぎますが、こうやって比較すると恐ろしい価格になりますね。
生の数値は以下となります。
経過年数 [年] |
入金 [万円] |
元本 [万円] |
年利5% [万円] |
年利5% [万円] |
年利5% [万円] |
年利5% [万円] |
年利5% [万円] |
1 | 100 | 100 | 105 | 104.9 | 104.5 | 104 | 102.9 |
2 | 100 | 200 | 215 | 214.9 | 213.6 | 212 | 208.8 |
3 | 100 | 300 | 331 | 330.3 | 327.7 | 324.3 | 317.7 |
4 | 100 | 400 | 453 | 451.4 | 446.8 | 441.1 | 429.9 |
5 | 100 | 500 | 580 | 578.4 | 571.3 | 562.5 | 545.2 |
6 | 100 | 600 | 714 | 711.6 | 701.3 | 688.6 | 663.9 |
7 | 100 | 700 | 855 | 851.3 | 837.2 | 819.8 | 786.1 |
8 | 100 | 800 | 1003 | 997.9 | 979.1 | 956.1 | 911.8 |
9 | 100 | 900 | 1158 | 1151.6 | 1127.4 | 1097.8 | 1041.1 |
10 | 100 | 1000 | 1321 | 1312.9 | 1282.3 | 1245.1 | 1174.2 |
11 | 100 | 1100 | 1492 | 1482.1 | 1444.2 | 1398.3 | 1311.2 |
12 | 100 | 1200 | 1671 | 1659.5 | 1613.3 | 1557.5 | 1452.1 |
13 | 100 | 1300 | 1860 | 1845.6 | 1789.9 | 1722.9 | 1597.1 |
14 | 100 | 1400 | 2058 | 2040.9 | 1974.5 | 1894.9 | 1746.3 |
15 | 100 | 1500 | 2266 | 2245.7 | 2167.4 | 2073.7 | 1899.9 |
16 | 100 | 1600 | 2484 | 2460.5 | 2368.8 | 2259.6 | 2057.9 |
17 | 100 | 1700 | 2713 | 2685.8 | 2579.3 | 2452.8 | 2220.4 |
18 | 100 | 1800 | 2954 | 2922.2 | 2799.2 | 2653.6 | 2387.7 |
19 | 100 | 1900 | 3207 | 3170.1 | 3028.9 | 2862.4 | 2559.9 |
20 | 100 | 2000 | 3472 | 3430.2 | 3269 | 3079.4 | 2737 |
21 | 100 | 2100 | 3751 | 3703 | 3519.7 | 3305 | 2919.3 |
22 | 100 | 2200 | 4043 | 3989.2 | 3781.7 | 3539.5 | 3106.8 |
23 | 100 | 2300 | 4350 | 4289.3 | 4055.4 | 3783.3 | 3299.8 |
24 | 100 | 2400 | 4673 | 4604.2 | 4341.4 | 4036.7 | 3498.4 |
25 | 100 | 2500 | 5011 | 4934.5 | 4640.1 | 4300.1 | 3702.8 |
26 | 100 | 2600 | 5367 | 5280.9 | 4952.2 | 4573.9 | 3913.1 |
27 | 100 | 2700 | 5740 | 5644.3 | 5278.3 | 4858.5 | 4129.4 |
28 | 100 | 2800 | 6132 | 6025.5 | 5619 | 5154.3 | 4352.1 |
29 | 100 | 2900 | 6544 | 6425.3 | 5974.9 | 5461.9 | 4581.2 |
30 | 100 | 3000 | 6976 | 6844.7 | 6346.8 | 5781.6 | 4817 |
31 | 100 | 3100 | 7430 | 7284.7 | 6735.3 | 6113.9 | 5059.6 |
32 | 100 | 3200 | 7906 | 7746.2 | 7141.2 | 6459.3 | 5309.2 |
33 | 100 | 3300 | 8407 | 8230.2 | 7565.2 | 6818.4 | 5566.1 |
34 | 100 | 3400 | 8932 | 8738 | 8008.2 | 7191.7 | 5830.4 |
35 | 100 | 3500 | 9484 | 9270.6 | 8471.1 | 7579.7 | 6102.4 |
36 | 100 | 3600 | 10063 | 9829.3 | 8954.6 | 7983.1 | 6382.2 |
37 | 100 | 3700 | 10671 | 10415.4 | 9459.8 | 8402.4 | 6670.2 |
38 | 100 | 3800 | 11310 | 11030.1 | 9987.6 | 8838.2 | 6966.5 |
39 | 100 | 3900 | 11980 | 11674.9 | 10539 | 9291.3 | 7271.5 |
40 | 100 | 4000 | 12684 | 12351.3 | 11115.1 | 9762.2 | 7585.2 |
41 | 100 | 4100 | 13423 | 13060.8 | 11717 | 10251.8 | 7908.1 |
42 | 100 | 4200 | 14199 | 13805 | 12345.8 | 10760.7 | 8240.3 |
43 | 100 | 4300 | 15014 | 14585.6 | 13002.8 | 11289.7 | 8582.2 |
44 | 100 | 4400 | 15870 | 15404.5 | 13689.1 | 11839.6 | 8934 |
45 | 100 | 4500 | 16769 | 16263.4 | 14406.2 | 12411.2 | 9296 |
46 | 100 | 4600 | 17712 | 17164.4 | 15155.3 | 13005.4 | 9668.5 |
47 | 100 | 4700 | 18703 | 18109.5 | 15938 | 13623 | 10051.8 |
48 | 100 | 4800 | 19743 | 19100.9 | 16755.7 | 14265.1 | 10446.2 |
49 | 100 | 4900 | 20835 | 20140.8 | 17610 | 14932.5 | 10852 |
50 | 100 | 5000 | 21982 | 21231.6 | 18502.5 | 15626.3 | 11269.6 |
30年運用続けた場合は
経費0% :6,976万円
経費0.1%:6,844.7万円
経費0.5%:6,346.8万円
経費1.0%:5,781.6万円
経費2.0%:4,817万円
となります。
つまり実コストは
経費0.1%:131.3万円
経費0.5%:629.2万円
経費1.0%:1,194.4万円
経費2.0%:2,159万円
と算出されます。
30年でも十分高いです。こうやって比較すると経費率は極力抑えたいという気分になってきます。
もちろんテーマが伸びた場合は年5%以上に成長すると思いますので、経費率を差し引いてもパフォーマンスが良い、ということで投資する考えもあると思います。このあたりは各々の投資スタイルによって判断していただければと思います。
まとめ
ETFの経費率は資産が少額のうちはそれほど気にならないのですが、1000万円を超えたあたりから毎年のコストは重くのしかかってきます。S&P500連動のVOOや全米トータルのVTIといったアメリカ株式市場に投資するETFの経費率は0.03%、NASDAQ市場に投資できるETFのQQQが0.2%です。個人的な意見にはこのぐらいが許容できる範囲かなと思っています。
また、テーマETFの高い成長率は魅力的ではありますが、構成銘柄の中で特に優れたパフォーマンスを誇る銘柄があった場合、ポートフォリオ全体をリバランスするために定期的に売られてしまいます。たとえそれが上昇トレンドの中にあったとしてもです。なので私としてはテーマETFが気になる場合、構成銘柄を確認してその中でも上昇トレンドに入っている個別銘柄に投資することをオススメしたいです。
しかし経費を払いたくないからといって、何十~何百もの個別株を保有して管理することは大変かと思います。ただそのような自分がいくつの銘柄までなら管理できるか、という懸念は実際に銘柄を買って管理してみないとわかりません。なので私としてはまずは個別銘柄を色々買ってみて、どうしても管理できない、だけどたくさんの銘柄に投資したい、という方のみテーマETFを検討してほしいと思います。
個別銘柄の管理方法として、以下の記事でも軽く紹介していますがTradingviewのウォッチリストに購入銘柄を全部入れて一気にチャートを見れるようにすることを私としてはオススメしています。
また、テーマETFの構成銘柄は意外とたくさん有るわけでなく、物によりますが上位10銘柄でポートフォリオの半分以上を占めたりすることもあります。なのでテーマETFを買う場合は構成銘柄をしっかり理解して買うことをおすすめします。
↓記事が気に入ったらクリックお願いします。モチベーションが上がります。